土を育て、樹を育て、果実を育てる
私たちは何を大切にして果物を育てているのか
山梨県で三代続く果樹農家として、私たちは桃やぶどうを育てています。
果物づくりは自然相手の仕事です。
同じ畑でも、同じ樹でも、天候や環境によって毎年まったく違う表情を見せてくれます。
暑さが厳しい年もあれば、長雨に悩まされる年もあります。病害虫の発生状況も毎年異なり、自然条件を完全にコントロールすることはできません。
そんな中で私たちが大切にしているのは、毎年安定しておいしい果物をお届けすることです。
そのために、土づくりや樹の健康管理を何よりも重視し、長年の経験とデータの両方を活かしながら栽培を行っています。
今回は、私たちの果物づくりに対する考え方をご紹介したいと思います。
毎年同じ品質を届けるために

果物づくりは、その年の天候によって大きく左右されます。
春先の低温や霜、長雨、猛暑、台風など、さまざまな要因が果実の品質や収穫量に影響を与えます。
そのため私たちは、「良い年だけおいしい果物ができる農業」ではなく、「毎年安定しておいしい果物を届けられる農業」を目指しています。
天候が厳しい年でも一定以上の品質を維持し、条件の良い年にはさらに品質を高める。
そのために、日々樹の状態を観察し、必要な管理を積み重ねています。
長年の経験だけに頼るのではなく、土壌分析や生育状況の確認など、客観的なデータも活用しながら栽培を行っています。
農薬との向き合い方
私たちは農薬を使用しています。
ただし、地域のJAが定める防除暦に基づき、認可された農薬のみを適切な時期・適切な量で使用しています。
防除暦とは、その地域の気候や病害虫の発生傾向をもとに作成された栽培指針です。
また、毎年同じように散布するのではなく、その年の病害虫の発生状況や畑の状態を確認しながら、本当に必要なものだけを使用するよう心がけています。
病害虫の発生が少ない年には散布を見送ることもあります。
私たちが大切にしているのは、「農薬を使う・使わない」という二択ではなく、果樹を健全に育て、安全で品質の高い果物を安定してお届けすることです。
土づくりこそ果物づくり
私たちが最も力を入れているのは土づくりです。
どれほど良い品種でも、健康な土がなければ良い果物は育ちません。
栽培に使用する肥料は、有機肥料を中心としています。
さらに毎月土壌分析を行い、土の状態を数値で確認しています。
不足している成分があれば有機肥料で補い、必要に応じて化成肥料も活用しながら樹の生育を調整しています。
有機だから良い、化成だから悪いという考え方ではなく、その時々の樹に必要なものを見極めながら管理することを大切にしています。
土壌分析による科学的な視点と、長年培ってきた経験。その両方を活かすことで、健全な樹づくりにつなげています。
除草剤を使わない理由
私たちの農園では除草剤を一切使用していません。
畑に生えた草は定期的に刈り取り、そのまま畑に残しています。
刈った草は時間をかけて分解され、やがて土へ還ります。
これは「緑肥」となり、土壌の保水力向上や有機物の補給につながります。
また、除草剤を使用しないことで、土壌中の微生物や菌類が豊かな状態で維持されます。
目には見えませんが、土の中には多くの微生物が存在しています。
それらが有機物を分解し、樹が吸収しやすい栄養へと変えてくれることで、健康な土壌環境がつくられていきます。
私たちは果樹を育てるだけでなく、その土壌環境そのものを育てていると考えています。

自家製堆肥への取り組み
土づくりの一環として、自家製堆肥の製造にも取り組んでいます。
使用しているのは、ドライフルーツ製造時に発生する果物の残渣、コーヒーの抽出かす、落ち葉、油かすなどです。
これらを発酵させ、堆肥として畑へ戻しています。
本来であれば廃棄される資源を再利用することで、土壌を豊かにしながら廃棄物の削減にもつなげています。
果物を育て、その果物を加工し、加工の過程で生まれた副産物を再び畑へ還す。
そんな循環型の取り組みを少しずつ形にしています。

私たちが目指す農業
私たちは特別な農法を掲げているわけではありません。
しかし、土壌の状態を見つめ、微生物と共生しながら樹を育て、必要な管理を丁寧に積み重ねることで、毎年変わらぬ品質の果物をお届けしたいと考えています。
自然に任せるだけでもなく、人の力だけで作り上げるのでもない。
自然の力を活かしながら、長年の経験と技術、そして科学的な視点を組み合わせることで、持続可能な果樹栽培を目指しています。
農業は自然との対話であり、次の世代へ引き継いでいく大切な仕事です。
土を守り、樹を育て、果物を実らせる。
その積み重ねが、未来の農業や地域の豊かさにつながると信じています。
これからも山梨の地で果物づくりを続けながら、
「果物を通じて未来に価値を届ける」
という理念のもと、次の世代へとつながる農業を目指してまいります。
